バッキン


がら空きの電車。
一番端の席に座る。
次の駅で人が乗ってきた。
そして隣に座った。
なぜ?
席はがら空きなのだからもっと離れて座ればいいのに。
そうすればお互い広いスペースを使うことができるし、
今は夏、隣に人がいるだけで暑いのよ。
隣の男を見ながら思った。
それになんだか落ち着きがない。
座るなり帽子を脱いだりかぶったりを繰り返している。
ああ、どーして私の隣に座るの?
少し考えればわかるじゃない?
あなたの右隣りはがら空きなの、
なんで左に詰める必要があるの?
なんて気の利かないやつ。
きっと洗面所の電気を消し忘れるようなやつだわ。
ああ、いらいらする。
すると男はかばんから紙を取り出し見、しまっては取り出しまた見る。
動く度に男の左肘があたる。
何度もあたる。
いったい何をそんなに見ているのだろう?
と思い、のぞき込んだら、
目に飛び込んできたのは次のような文字だった。
青葉ひいらぎ荘
障害者の方でも働きやすい職場です。